2013年2月13日水曜日

政治報道の新たな可能性 ―プロパブリカによる大統領選挙特集

 アメリカの民間非営利団体・プロパブリカ(ProPublica)が、2012年に行われた大統領選挙について、継続的なレビューをしている。http://www.propublica.org/series/campaign-2012

 「ダーク・マネーとビッグデータ」というこの特集では、選挙中から現在に至るまで、様々な角度から分析し、いったいどのような選挙であったのか検証し続けている。


 その分析はかなりの規模で行われていて、しかも多岐にわたる。例えば、オバマの選挙戦術に関する分析がある。昨年の大統領選挙において、オバマ陣営は、支援者あるいは支援者となってくれそうな人に対し、こまめにメールを送り、少額の寄付を大量に集めた。そのために、いわゆる「ビックデータ」と呼ばれる、性別、居住地、年齢、宗教、寄付の履歴等々、様々な個人に関する属性のデータから最も「効果的」と思われる文面を送っていたといわれる。もちろん、オバマ陣営がどこから情報を集め、どのような人にどうアプローチをしているか明らかにすることはない(もし、そんなことをしたら、すぐに「政治問題」になるだろう)。そこで、プロパブリカは実際にメールを受け取った190人の情報から、メールには6つのパターンがあることを明らかにし、かつ受け取った人の属性との関係を調べることで、オバマ陣営の手法を明らかにしようとしている。まさにオバマの「選挙マシーン」をリバース・エンジニアしようとする試みである。


 近年、アメリカの選挙で一番問題になっているのは、「スーパーPAC(Political Action Committee:政治活動委員会)」である。候補者本人の政治団体に寄付をする場合、厳密な情報公開のルールがあり、寄付自体にも上限があるが、この任意団体である「スーパーPAC」への寄付は無制限である。スーパーPACは、テレビ広告などを大々的に使って、特定候補者を応援したり、ネガティブキャンペーンを張ることで、大きな影響力を選挙戦で振るっている。にもかかわらず、どの候補者の支援団体か一見よくわからないし、誰がスーパーPACに寄付をして、何にどれほど支出をしているか実態がよく分らない。また、スーパーPACと候補者陣営の関係についても不透明である。

 そこでプロパブリカは、各スーパーPACがどのような活動をしていて、誰を支援しているのか、一覧で表示し、スーパーPACと陣営の資金の流れ、誰がどれくらい寄付しているかなどなど、インフォグラフをつかって、分りやすく提示している。



例:スーパーPACと候補者の支出の流れ



 プロパブリカでは、新しい事実がわかり次第、<追記>がされて、膨大な記事のストックが出来上がりつつある。そして政治資金という、文章では伝わりにくい問題も、インフォグラフを活用することで、視覚的に全体像がわかるような工夫がされている。まさに、ウェブの特性を活かした、これからのジャーナリズムの可能性を示しているものといえよう。

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